本【君の膵臓をたべたい】いい話だけど絶対泣ける!はハードルあげすぎだという感想

2016年の本屋大賞で2位となったこの小説『君の膵臓をたべたい』をようやく読んだ。

映画化されるということもあって、うちの近くの書店では未だに平積みされているし、作者の住野よるさんコーナーもある。

それにしても『君の膵臓をたべたい』だなんて、強烈なインパクトのタイトル。

これがミステリー小説ならば、内臓を食らうサイコパスの話かと想像できるんだけど、恋愛小説っていうのだから。

目の中に入れても痛くないとかそういった比喩表現で「膵臓を食べたいくらい愛してる」とかそういうことか?いや、どんなだよそれ、と想像しながら手にとったのだけど。

これは・・・タイトルと帯でハードルあげすぎてるんだと思う

多くの人が評価するように「読みやすい」という類の小説であり、ある意味では読みにくい。色々と気になっちゃったな。

ざっくりとあらすじ

「昔の人はどこか悪いところがあると、他の動物のその部分を食べたんだって」

「肝臓が悪かったら肝臓を食べて、胃が悪かったら胃を食べてって、そうしたら病気が治るって信じられてたらしいよ。だから私は、君の膵臓を食べたい」

(引用:『君の膵臓をたべたい』本文)

膵臓を病んで、余命いくばくもない女子高生・山内桜良(やまうち さくら)と、期せずしてそんな彼女の運命を知ってしまった【クラスメイト】くん。

人を評価することも人から評価されることも拒み、他人との関わりを避け、目立たぬように生きてきた男子高生が、自分とは正反対の明るく溌剌とした彼女の秘密を共有してしまう。

「私は膵臓が使えなくなって、あとちょっとで死にます」

「・・・・・・・・ああ、そう」

「えー それだけ? なんかこう、ないの?」

「いや、クラスメイトにもうすぐ死ぬって言われて、なんて言えばいいの?」

「うーん、私なら言葉失うなぁ」

「そうだよ。僕が沈黙しなかったのだけでも評価してほしい」

(引用:『君の膵臓をたべたい』本文)

桜良の現実を淡々とうけとめ、淡々と接する【クラスメイト】くんの様子に、なぜか嬉しそうな彼女は、その日から【クラスメイト】くんに急接近しはじめる。

焼肉デートにスイーツバイキング、1泊2日の旅行・・・

彼女の誘いはいつも強引なのだけど、「僕は草舟、大型船に立ち向かっても意味はない」と諦めた様子で彼はすべてを受け入れる。

ただ彼女に流されている・・・つもりだった

そうか、今、気がついた。

誰も、僕すらも本当は草舟なんかじゃない。流されるのも流されないのも僕らは選べる。

それを教えてくれたのは、紛れもない彼女だ。

(引用:『君の膵臓をたべたい』本文)

彼女と出会ったことで、彼の生き方が大きく動きだしていたことに気づいた。

人と関わりたくないんじゃなくて、関わるのが怖かっただけ。傷つくことに恐れていただけ。他人とつながることの楽しさを、今まで知らなかったことを、本当にたくさんのことを彼女は教えてくれた。

「僕は本当は君になりたかった」

「僕は・・・君の膵臓を食べたい」

(引用:『君の膵臓をたべたい』本文)

感想

病気とか余命とか重いテーマを扱っているにもかかわらず、無機質な【クラスメイト】くんの存在がその重苦しさを感じさせず、単なるお涙頂戴にならずに死生観を考えさせられる

人とつながることを避けてきた【クラスメイト】くんは、桜良のように人とかかわりながら生きることに憧れている自分に気づいた。

一方で、いつも誰かの中で生きてきた桜良は、【クラスメイト】くんのように周りがいなくてもたった1人の人間として生きることに憧れていたと告白する。

うん、どっちの気持ちもわかるし、きっと多くの人がそういう自分を抱えて生きてるんだろうなと思う。

私もどちらかというと、【クラスメイト】くんのように、周りと合わせるのが疲れるとか面倒だと感じたりするほう。

私の現状でいうとママ友とかそういう輪の中に率先して入りたいとは思わないから、社会人として挨拶程度ができてればそれで良しと思ってたりする。

だけど自然に輪の中にはいって笑ってたり、挨拶程度を超えた会話を楽しんでいる人たちをみると、やっぱりいいなと思っている自分もいて。

面倒そう、だけど楽しそう

いや、多分そういったことを自然にできる人たちは、そんな付き合いを面倒だとは感じてないのだろうけど。

誰かと心を通わせることに積極的ではなかった【クラスメイト】くんを通じて、私もわかったことがあった。

結局、他とのつながりを拒むのは、人から評価されるのが怖いから。自分に自信がないからなんだろうな。私も。

物語が進むにつれて【クラスメイト】くんの心は静かに動き出して、その様子は押し付けがましくなく表現されていて、胸をうった。

(photo by ai3310X)

ここからは気になったところ

登場人物が高校生という設定なので、ターゲットもその辺りなのかな。

会話文が多用された小説というのは、SNSとかLINEとか、そういうものに慣れている人たちにはしっくりくるのかもしれない。

「高校生の会話」だからね、他愛のない、っていうか意味のないものも多くて、それがリアルというものなのかもしれないけれど、ちょっとね、飽きてきてしまいました。

軽く読めすぎてハマらないというか、そんな感じですかね。

桜良によって【クラスメイト】くんの心に変化がおこるのはストーリーとしては必要なのだけど、「え?誰?」ってぐらい変貌したようなセリフもちょこちょこあって、そこに違和感を感じると、余計にわけわかんなくなってしまったり。

その辺りから会話の無駄(私が感じるだけ)が増えてきたようで、ちょっと中だるみ

 

それから【クラスメイト】くんの名前が隠されていたことは、なんの効果があったのかなと。

彼は「名前を呼ばれた時に、僕はその人が僕をどう思ってるか想像するのが趣味」と言ってるので、作中では【地味なクラスメイト】とか【秘密を知っているクラスメイト】とか、相手が自分を思っているであろう表現で書かれているのだけど。

明かされた本名に、さほどインパクトもなく、物語への影響もなかったんですよね。

かといって【大括弧】でくくられた、彼をあらわす呼び方もただ読みにくかっただけで、あまり効果があったとは思えなかったし。

 

もっともよくわからなかったのは【クラスメイト】くんが孤独を選ぶようになった理由。家庭環境に問題があったのか、何かのトラウマなのか、とそれが明かされるのを待っていましたが、彼のその部分には一切ふれずに終わりました。

しかも両親はいたって普通というか、母親においては桜良を思わせるほどの強さと愛情を感じましたし。なぜそーなったの?

いろんな伏線を回収せずに終わってしまった感じで、そういうところは村上春樹的な印象を受けました。きっと村上春樹ファンだな、この作者。

全体的にライトなのに、ところどころで文学的な表現をつかっていたりとかね、そういったアンバランスさも気になってしまいましたね。

まとめ

いろいろ好きなことを書きましたが、要は好みの問題 です。

『世界から猫が消えたなら』も世間で大きく評価されて、映画化までされるのに個人的にはちょっとな・・・って感じだったし。

NHKの番組『課外授業 ようこそ先輩』に作者の川村元気さんが出演しているのを見た。 川村さんの母校である横浜の中学校で行われた課外授業。『...

しかしデビュー作で、本屋大賞2位とって、さらに映画化されるなんて本当すごいですよね。続々と新作も発表されてますし、書きたいことが溢れてるんだろうなぁ。

映画では「12年後に明かされる真実」とあるところをみると、原作にはない展開になっていることがわかります。

【クラスメイト】くんは小栗旬さん、そして桜良の親友・恭子として登場するのは北川景子さん。小説から12年後の、桜良がいた世界に生きる人たち。映画は映画で気になりますね。

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