小説【火の粉/雫井脩介】崩壊する家族とサイコパスが怖すぎる

ドラマ化されるということで読んでみました。雫井脩介(しずくい しゅうすけ)さんの『火の粉 (幻冬舎文庫)』。なんですかこれ、ミステリー?いや、ホラーでしょ。こわすぎるわ。

冤罪事件っていうのがあるけれど、無罪放免になった人を見ると「あぁ良かったね」っていうのと「いや、絶対やってるでしょ」っていうパターンがある。

白じゃなくグレー。そんなグレーな人間の狂気に翻弄されるある家族の話

 あらすじ(ネタバレなし)

6歳の子どもを含む3人の家族を惨殺したとして逮捕された武内。家族とともに現場におり、自らも背中に大きな傷を負い被害者を装っていたが、警察の追及により犯行を認めた。しかし、裁判では一転して全面否認する。

武内の犯行だと主張する検察や、極刑を望む世論に対し、裁判官・梶間はまさかの無罪を宣言した。武内の背中の傷が自分でやったとするには説明がつかないと。

2年後、武内の判決を最後に退官していた梶間の前に、武内があらわれる。久しぶりの再会に「私を救ってくれた恩人」と梶間に礼を告げる武内だったが、それから間もなく梶間家の隣の空き家に武内が引っ越してきたことですべてが狂いだす。

武内とは距離を置く梶間だったが、それに反して妻・尋恵や息子・俊郎はどんどん親交を深めていった。それほどに武内は善意に溢れ、誠心誠意、梶間家に尽くした。

唯一、俊郎の妻・雪見だけは親切な隣人に不快なものを感じていた。しかし次々と起こる出来事に彼女は追い詰められ、梶間家から追い出された。邪魔者がいなくなったとでも言うように、武内はますます梶間家に入り込んでいく。

そこへ武内の狂気を糾弾する人物・池本が登場する。武内が犯人とされた一家惨殺事件の遺族だ。しかし池本が武内を追い詰めることで逆に、クロに限りなく近かった武内がシロに傾いていく。

嘘をついているのは誰か?これは冤罪事件だったのか、否か。そして「真犯人」の狂乱がはじまる。

感想

いやもう、とにかく怖かった。なんでもない日常の出来事がどれもこれも疑わしく思えてくる。常に物陰にあの男が潜んでいるかのような錯覚。梶間家に用意周到に仕組まれた数々の罠が、1本の線として繋がったときの恐怖っていったらない。

ミステリーというよりもホラー小説。こういうのサイコパスっていうのかしら。

それにしても、著者の雫井脩介さんは、なぜこれほどまでに子育て中の女性の心理がわかるんだろう。子どもと関わっていないとわからないフレーズに驚いた。

雪見の2歳の子どもまどかがお絵描きをしているシーン。

「それ、何?」

「これはねえ」描いてから考えている。「ネコちゃん」

たったこれだけのシーンなのだけど、「描いてから考える」っていう小さな子どもの習性みたいなもの。そんな細かなリアルで、読んでいる私も雪見の子育てに寄り添ってしまうところがあった。

だからこそ、そんな子育て中の母の葛藤をウィークポイントとして突いてくるところが周到だし、ほんのいくつかの符号を掛け合わせるだけで、周囲の見る目が一転してしまうことも恐ろしいと感じた。

ドラマ化はユースケサンタマリア

とにかくこれはホラー小説ですね。ドラマでは、武内をユースケサンタマリアさんが演じます。うん、腹に一物もってそうだものね。ピッタリ。善人面してなんか冷たい狂気みたいなものも持ち合わせてて、あぁ本当ピッタリだわ。

でも池本役が佐藤隆太さんだなんて、な、なんか心配だな・・・

 COMMENT

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